今回は受験校考察シリーズ第3弾ということで、“薬学部”出身の受験生が合格しやすい大学について分析、考察しました!
私自身多くの編入試験受験生から相談を受けておりますが、相談者の学部別で最も多いのが薬学部です
やはり医学部学士編入受験の最大の母集団は 薬学部 だと思います!
しかしながら、薬学部出身が多いからこそ他の受験生と差別化を図るが難しいのも事実…
今回の記事を読むことで、
- 薬学部出身の受験生がどのような大学に合格しているか
- 同じ薬学出身の受験生に差をつけるための戦略
などに結びついていけば幸いです!
- 合格者全体の属性別割合
- 薬学部が最大の母集団たる所以は?
- 薬学部が最強の大学3選
- 薬学部の合格戦略 〜他の受験生との差別化〜
- まとめ
合格者全体の属性別割合
以前調査した2017〜2019年の医学部編入試験合格者について、属性別の割合の再掲です

前回の記事でも考察しましたが、上記グラフでの最大集団は“理系”(39%)、次点では”薬学部”(21%)、その次が”文系”(19%)となっています
前回記事はこちら⬇️
しかしながら、合格者の割合1位の“理系”と3位の“文系”はともに、多学部の複合集団なのです
つまり、学部別で言うと最大の集団は“薬学部”ということになります
薬学部が最大の母集団たる所以は?

これはエビデンスがあるわけではないので完全に持論ですが、結論から言うと
薬学部が医学部編入試験に最も有利な学部だからです
その理由として、大きく3つ考えられます
- 医学部編入試験で問われる生命科学の大部分を薬学部の講義で履修済
- 志望理由書で医療についてより具体的に動機や今後の展望が書きやすい
- 研究を経験しており英語論文にも触れている人が多い
これだと「生命科学系学部も有利なのではないか?」と思われる方もおられると思います
それもその通りですが、薬学部は国公立や私立など全国に多くの学校が存在し、現役薬学生や既卒を含めると相当大きな母集団になることが「薬学部が最大の母集団たる所以」に大きく関連していると思われます
上記の3つの理由について、詳しく考察していきます
1. 医学部編入試験で問われる生命科学の大部分を薬学部の講義で履修済

私は薬学部学生から相談を受けた際に、色々な人に聞くようにしていることがあります
「編入試験の問題や問題集をみて、レベル感についてどう?」
このように質問すると、だいたいこのように返答がきます
「初見でも結構わかります。見たことあるような問題もあるし、全体を通して全然わからないことはない。」
私は看護学部出身ですが、医学部学士編入試験で問われるような内容は「意味不明」だったので、正直かなり衝撃でした
そこで薬学部のシラバスについて調べてみたところ、上記のような返答があることに納得しました
以下、T京大学薬学部のシラバスを一部抜粋したものです
生化学、分子生物学、解剖学、生理学、薬理学、病理学、放射化学、構造分子薬学、微生物学、化学療法学、免疫学、薬品代謝学、医療薬学、医薬化学、分子生理化学、薬物動態制御学、薬物治療学、医療科学、生物統計学、遺伝学、発生学、物理化学、有機理論化学、有機化学など...
これだけ勉強しなければいけない薬学部の大変さを知ったとともに、これだけやってれば確かに医学部編入試験の問題が「意味不明」とはならない理由もわかります
「医学部編入試験に3ヶ月で合格しました!」という合格者の方は薬学部や生命科学系学部出身であることが多いですが、その3ヶ月より以前に多大なる勉強時間が潜在していることを我々は心に留めておく必要があるのではないでしょうか
2. 志望理由書で医療についてより具体的に動機や今後の展望が書きやすい

これも薬学部出身の受験生の志望理由書を添削している中で気付かされました
日頃から医療に触れ、治療に欠かせない薬物管理やその勉強に精通しているからこそ、医療界が抱える問題や理想的な医師像がイメージできている人が多いのです
確かに薬物管理ができる医師は治療を行う上でとても心強いですし、実際に薬剤師×医師として臨床現場で活躍されている医師の方々は多くいらっしゃいます
薬物が投与されることで体内でどのような機序で作用し効果をもたらすのか、つまり薬物動態を理解している医師は治療法の選択に優れた医師になるでしょう
また、実際に医師として治療に従事することで感じる現存薬物の問題点を、研究し臨床に還元できる医師がいたら新薬開発にも大きな功績が残せそうです
これは医療界にとって、何より治療を受ける患者にとって大きな恩恵があるため、大学としても薬学に精通した受験生を取らない理由はないと思います
3. 研究を経験しており英語論文にも触れている人が多い

薬学部は4年制でも6年制でも研究室に配属され研究をするため、研究経験があることが医学部学士編入においても大きなメリットになります
さらに、4年制に進む薬学生の多くは卒業後に大学院に進学し更に2年以上研究をすることになります
医学部学士編入を実施している大学にも少なからず研究医を育成したい大学があり、研究歴や成果がある受験生が欲しいのは言わずもがなですね
また、研究をする上で英語論文に触れることは多く、製薬会社に就職しても海外出張や英語での取引先とのやり取り、英語論文を読まなければいけない場面がある人も少なくないと聞きます
つまり、筆記試験の2本柱である生命科学だけでなく医療英語にもアドバンテージがある人が一定数いるということです
以上3つの理由から、
「薬学部は医学部編入試験で最も有利な学部のひとつであり、最大の母集団となる」
と結論づけます
薬学部が最強の大学3選

医学部編入試験を実施している国立大学ごとに属性別合格者を分析したところ、“薬学部”出身が他学部合計より高い比率を占めている大学はありませんでした
それは前回記事でも述べたように、“理系”の属性では生命科学系学部含め多くの学部を混合しているため、どうしてもこのような属性で分けて統計処理をすると“理系”が合格者に占める割合が大きくなってしまうためです
そこで、合格者のデータが多い(n≧5)かつ、合格者の中で“薬学部”出身が占める割合が高い順に3大学ピックアップしました
- 1位 香川大学(41.7%)
- 2位 琉球大学(37.5%)
- 3位 島根大学(35.3%)
以下、それぞれの大学について考察していきます
まず始めに1位の香川大学ですが、生命科学と英語(TOEIC)に加えて大学教養レベルの物理と化学が出題されることで有名な大学です
つまり、バリバリ理系有利の大学の1つなんですね
それを証明するデータとして、2017〜2019年の予備校データでは、香川大学における薬学部出身の合格者は41.7%を占めていますが、残りの約6割は全て“理系”出身でした
また、化学では“大学レベルの有機化学”からの出題が多いことから、薬学出身を有利にしています
これらの情報から、生命科学や有機化学に多くの時間を割かなくて済む薬学部出身の受験生が、物理を勉強して香川大学に出願するケースが多いのではないかと考察します
薬学系大学に出願する際に物理・化学で出願する高校生も多いことから、高校レベルの物理であれば比較的少ない時間で復習できる薬学出身の受験生も多いことが予測されますので、大学教養レベルの物理程度なら勉強しやすいのかもしれません
また、薬学部出身の受験生で弱点になりやすい英語においても、香川大学はTOEIC600点以上が出願条件のため出願しやすいことも影響しているでしょう
出願条件に推薦書の提出がないのも出願へのハードルを下げています
次に琉球大学ですが、2020年実施試験を除いて琉球大学は時期的に全国に先駆けて試験を実施していることで有名な大学でした
そのため、実力のある受験生が数多く受験し受験難易度を高めている一方で、追加合格の多い大学としても有名でした
上記で述べてきた理由から、薬学出身の受験生は受験強者であり、「とりあえず琉球大学を受験してみたら最終合格をもらった」というケースも多いのではないかと思われます
加えて、琉球大学では小論文が出題されますが、医療系である薬学部出身者は日頃から医療に触れているため時事問題にも強く、少ない対策で及第点を得やすい傾向にあります
最後に島根大学ですが、3年次編入を実施している数少ない大学の1つです
また、募集人数が10名(地域枠4名以内含む)と比較的多くの募集人員があるため人気校のひとつです
島根大学の3年次編入では、出願資格として「歯科医師、獣医師、薬剤師のいずれかの免許を保持する者(取得見込みの者も含む)」があり、これが薬剤師からの人気が殺到している要因の1つとして考えられます
筆記試験では生命科学や英語に加えて大学教養レベルの物理・化学が出題されますが、香川大学と同様、“大学レベルの有機化学”からの出題が多いことが薬学部からの出願人気に関連しているのではないでしょうか
薬学部の合格戦略 〜他の受験生との差別化〜

ここまで、薬学部が医学部編入試験においていかに有利であるかについて述べてきました
しかし、裏を返せば薬学部出身の筆記試験合格者も多いために、志望理由書や面接、プレゼンテーションや集団討論などで個性を出しにくく、他の薬学出身の受験生との差別化が図りにくいという欠点も存在します
もちろん「筆記試験で高い点数が取れれば逃げ切れるし関係ない」と考える方もおられると思いますし、現実はそうなのかもしれません
ただ、医学部編入試験を実施している大学の中には、面接試験の傾斜配点が高い大学も存在するため合格可能生を少しでも高める上で面接対策は必須です
そこで、志望理由書や面接において他の薬学部出身受験生と差別化を図るポイントを4つ考えました
- ①志望大学が力を入れている研究分野と自身の研究の共通点や関連をみつける
- ②研究内容が目指す医師像と関連するようにストーリーをつくる
- ③学部生の場合は部活動や課外活動で身につけたスキルを、社会人の場合は病院や薬局、企業等で得られた経験やスキルを医師としてどう活かすかまで記載し個別性を出す
- ④志望大学がある都道府県の医療問題を調べ、それにどのように貢献できるか、また自分が医師になることで医療界全体にどのようなメリットがあるかまで提示する
これらは薬学部出身の受験生以外にも当てはまる内容ではあると思いますが、差別化の図りにくい薬学出身の受験生こそ、より強く意識して志望理由書や面接の解答に盛り込むべきです
また、これらの詳しい説明をすると長くなるので、志望理由書や面接対策としてまた別の記事にしようと思います
まとめ
・以下の理由から医学部編入合格者で最も多い出身学部は薬学部 ①医学部編入試験で問われる生命科学の大部分を薬学部の講義で履修済 ②志望理由書で医療についてより具体的に動機や今後の展望が書きやすい ③研究を経験しており英語論文にも触れている人が多い ・香川大学、琉球大学、島根大学の順で薬学出身の合格者比率が高い ・薬学部は同じ学部出身の受験生が多いからこそ研究や経験から得たスキルを医師としてどう活かすかというストーリーを練ることが重要
今回は薬学部出身の合格者に絞って分析・考察し、志望校の選定や面接対策についてまとめてみました
考察を深める中で薬学部の勉強の大変さを知ったとともに、薬学部出身の合格者が「3ヶ月で合格できました」「働きながら合格しました」といった報告が多いのも納得できました
なぜなら、その数ヶ月の陰に5〜6年単位の莫大な勉強時間が隠れているからです
自分もそうでしたが、生命科学に触れたことがない受験生は薬学出身合格者の陰の努力を念頭に置いた上で参考になるところをご教授してもらうと良いと思います
最後になりますが、おかげさまでtwitterのフォロワーさんもまもなく400人になります
微力ながら受験生の方々に貢献できればと思ってますので、400人になったらまた無料zoom相談企画を開催したいと思います!
今後とも宜しくお願いします!
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